若い夏 読書感想「MISSING」

9月 16th, 2009 admin

MISSING (双葉文庫)
MISSING (双葉文庫)
posted with amazlet at 09.09.16
本多 孝好
双葉社
売り上げランキング: 89844

どんな本を読んでいるのか全くわからない友人がmixiでお薦めしていた一冊。「このミステリーがすごい!2000年」で10位にランクインしています。

ちょっと奇妙だったり不思議だったりする短篇5作品。どうも僕は、本多孝好さんの文章を読んでいると村上春樹の文体に似ているのが気になってしまって集中できなかった。今回はお薦めエントリーではない。

村上春樹のあの書き方は彼の圧倒的な知識量と後光があってこそ、初めて僕等は身を任せて酔っ払う事ができる代物。素人がお経を唱えてもありがたみが全然無いのと同じ理由で、ひたすら回りくどい言い回しが鼻につく。

そして話がどれも強引だ。作者が表現したいものを露骨に表現しすぎている。だから登場人物がどれも個性的になりすぎるし、セリフも説明が多くなる。うまい作家ならもっと間接的に伝えてくる、空模様や登場人物の食事のメニューを通じて読者にメッセージを伝えてくる。そういう小説が僕は読みたい。

でも第16回小説推理新人賞受賞作なんかもあるので、単に僕の好みにあわなかっただけの話なのだろう。(あと、まじめな話新人賞とかは今後ののびしろも考慮して与えているのだとも思う)
人の文章を僕なんかの文章で悪く言うのもなんだけど、とにかく好みにあわなかった。そいうこともあるみたいです。

★☆☆☆☆

そこに山があるからではない! 読書感想「神々の山嶺」

8月 26th, 2009 admin

神々の山嶺〈上〉 (集英社文庫)
夢枕 獏
集英社
売り上げランキング: 42392
神々の山嶺〈下〉 (集英社文庫)
夢枕 獏
集英社
売り上げランキング: 10235

あなたの好きな小説を読ませてくださいシリーズの第7弾ぐらい。
今回は学生時代の友人の推薦本。司馬遼太郎好きの彼だからこれも面白いんだろうなと思ったのだがそれ以上に面白かった。

山に登る理由が「そこに山があるから」で許されるのは小学生まで。その答えを孤独な登攀者、羽生丈二にぜひ学んで欲しい。

あらすじ

エベレスト登頂に失敗し、友人も失った失意の中、主人公が偶然ネパールの中古品店でみつけた旧式のコダック製カメラをめぐるお話

感想

この本は2つの点でお得でした。ひとつは山岳小説として8000m級の山を登るということがどういうことか疑似体験させてくれたということ、もうひとつは羽生丈二という生き方を突き付けてられ、考えさせられたという点です。

まず、山岳小説としての話ですが、これは凄い。吐息が凍る程寒く、一歩進ごとに喘がなくてはならないほど酸素の薄い状態の山で、凍った岸壁を登っていくとか恐い!恐すぎる(しかも雪崩、落石がきたら終了)。読んでいて足の指先がしもやけの時のようにむずむずします。
ニュースでは「高齢者がエベレスト登頂!」とかって明るい報道ばっかりなので、21世紀の装備なら体力自慢の人なら行けるとかって思ってた自分の貧弱な想像力を呪いました。「気力」と「運」。意外にもこの二つの形の無いものこそエベレスト登頂の鍵のようです。

そして、羽生丈二という生き方。彼の少ないセリフは一つ一つが今の僕のような中途半端な生き方を深く傷つけてくれます。すべての餓えた狼の気持ちを忘れた男子に贈りたい。(草食男子?反吐がでるね)

まとめ

面白い!今まで他の小説に贈ってしまった「面白い」という言葉を半分ぐらい取り返したい(特にハリーポッターあたりから)ってぐらいよかった。
面白くないという人がいるのなら逆に興味があるってぐらいなので誉めるのはここまでにしておきます。

登山と読書の違いはいきなり最高峰に挑戦できるかどうかってところ。まあ黙って読んでみようじゃありませんか。そこに物語があるんですから

★★★★★(満点)

これが・・・モビルスーツ 読書感想「宇宙の戦士」

8月 8th, 2009 admin

宇宙の戦士 (ハヤカワ文庫 SF (230))
ロバート・A・ハインライン
早川書房
売り上げランキング: 42431

dominion525に無言で手渡され、面白いとも面白くないとも聞かず読み始めた一冊。

あらすじ

近未来のお話。世界は平和で、退役軍人だけが選挙権を持った世界という設定。世界は主人公ジュアン・リコは裕福な家に育ちながら軍隊の機動歩兵部隊に入隊する。

感想

この本はSF小説というより、政治だとか戦争の話だった。
まず退役軍人だけが選挙権をもち、政治を行うという考えが面白い。確かに国のために命をかけたことの無い人に政治ができんの?という問いは今の政治家にしてみたい
そして僕が好きなのはズイム軍曹。フルメタルジャケットのハートマン軍曹にツンデレのエッセンスを加えたとくれば愛せずにはいられません。

まめ知識

・この小説にでてくる「強化服」というのがモビルスーツ見たいなのの原点
・主人公は白人ではない、当時としてはありえない出来事

まとめ

全体としてはとても面白い、だけどSFではない。こういう著者が読者に物語を通じて露骨に思想を押し付けてくる小説を読んだのは初めてな気がする。
退役軍人が政治を行う世界・・・結構いいんじゃないでしょうか。

★★★★☆

「やれやれ」って言いたい 読書感想「ノルウェイの森」

7月 22nd, 2009 admin

ノルウェイの森〈上〉
ノルウェイの森〈上〉
posted with amazlet at 09.07.22
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 3076
ノルウェイの森〈下〉
ノルウェイの森〈下〉
posted with amazlet at 09.07.22
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 3102

新潮文庫の表紙にあるタグを規定枚数集めるともらえるパンダのグッズが欲しいから本を買うわという人に付き合って買った本。家に帰ってよくみてみたら新潮文庫ではなく講談社でショックを受けました。

あらすじ

37歳の主人公はドイツに向かう飛行機の中で「ノルウェイの森」を耳にし、20年近く前の恋人を思い出す。

感想

作品中でも登場人物がわざわざ発言しているのだが、主人公がライ麦畑のホールデンに非常に似ている。村上春樹がThe catcher in the ryeを翻訳するのはノルウェイの森をかいたずっと後なのだが、それでもこの作品を読んでいると村上春樹がThe catcher in the ryeを翻訳したというのは村上春樹ファンには本当に素晴らしい出来事だったんだなと、この奇跡の共演に感謝したくなりました。(村上春樹にとっては偶然でも奇跡でもないでしょうが)

そしてお話の内容もやはりホールデンのような主人公がでてくる以上はライ麦畑のようなお話になる。村上春樹版のライ麦畑なんだなーと思いました。
最近は女性にこそ読んで欲しいと思うような小説を読むことが多かったのだけど、これはとても男の子向け。僕は男なので体験もしたこと無いようなことでも「わかるわかる、その気持ち」とタフな主人公の気分にひたるのは痛快だ。久しぶりにライ麦畑をよみたくなってきたので探してみようかな。

★★★★☆

明日ジャム作ろうぜ! 読書感想「西の魔女が死んだ」

7月 14th, 2009 admin

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 544
おすすめ度の平均: 4.5

4 健全な死生観
4 自分の足でまっすぐ立って歩く
4 魔女
5 自分で考えて自分で決める
4 愛される喜び

読書が苦手な知合いにプレゼントしようと選びました。
短い話なので数時間あれば読めてしまうが、あなどるなかれ一生ものの愛と知恵のつまった一冊でした。

あらすじ

中学生生活に馴染めない女の子「まい」がイギリス人のお祖母ちゃん(そういえば、お祖母ちゃんの名前は一度もでてこなかった??)と二人きりで暮らすというお話。
短いながらも、実の娘からも魔女と呼ばれるお祖母ちゃんとの愛と知恵に溢れた生活はだんだんとまいを成長させていく。

脳内再生が止まらない

田舎に一人で生活をしている祖母がいる僕にはたまらないお話だった。孫に対する豊かな愛と、自然と上手に(そうとても上手に)付き合うための生活に根ざした深い知恵をもったおばあちゃんというのを僕は知っている。
物語の最初から最後まで僕の頭の中では舞台は岐阜県岐阜市佐野の田舎、そして西の魔女は美濃の魔女である自分の祖母だった。
やさしいおばあちゃんを知っている人、厳しく頑固な母をもつ女性にはそれだけでもうたまらない物語です。

「オールドファッション」な生活

物語は現代の日本なのだが、西の魔女は洗濯機もつかわないず、卵も鶏が産まなければ食べないような半分自給自足の生活をしています。苺が採れればジャムをつくり、ミントが採れればお茶にして、ラベンダーが咲けばシーツに香りを移したりと、ゆっくりをとした時間の流れる豊かな生活は読んでいるだけなのに田舎の空気で呼吸をしているような気持ちになれました。

魔女の愛

人間関係・死・自然との付き合いなど、もうありとあらゆる不安を抱えている主人公を、魔女は「魔女になるための修行」をすることでひとつひとつ救っていきます。どの答えもシンプルでわかりやすく、やさしいものでした。

まとめ

この作品は映画化されており「号泣できる」とかいわれていたのですが、少なくとも小説はそういう話ではないような気がしました。ネタばれとかではなく魔女は小説の1行目でいきなり亡くなってしまうのですが、それに対する悲しさよりも暖かい気持ちになることの方が多かったように思います。
特に最後の魔女からのサプライズは主人公の魂を救ったとも言える大きな大きな愛のプレゼントで、僕は魔女からの明るい前向きなプレゼントに目頭が熱くなりました(やっぱり泣けるわ)

僕は男だけど、この本は特に女性にお薦めしたいなと思いました。小中学生の時に主人公に共感してよし。母親時代に主人公の母親気分を味わってよし、おばあちゃん時代に孫への愛の伝えかたを学んでよしと、人生で少なくとも3度は楽しめる1冊なんじゃないでしょうか。

さて、今週の土日は岐阜に帰ろうかな。
★★★★☆