高級小説 読書感想「グレート・ギャツビー」(村上訳)

1月 5th, 2010 admin

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
スコット フィッツジェラルド 村上春樹
中央公論新社
売り上げランキング: 1026
おすすめ度の平均: 4.5

5 村上春樹ファンなら必読の一冊
5 Old Sport、という奇異な響きが頭から離れない。
5 読むほどに、人生を深く愛おしく感じる小説
2 野崎 孝 訳を推薦します。
5 よかった

 知合いに勧められたマンガを探しにヴィレッジ・ヴァンガードに寄ったときに本棚で見付けた。ノルウェイの森やキャッチャー・イン・ザ・ライに登場していたり、村上春樹が相当この作品を好きだってことで気になっていたので即購入。
 僕はここ数年村上作品が大好きなので、村上関連作品に関してはほとんど盲目的になっている自信があり、主観的過ぎる以上に偏った評価しかできないのですが、それでも最初から最後までとても面白かったし、たとえ面白くなかったとしても質の高さは抜群で本当に素晴らしい作品だったなと思いました。

あらすじ

主人公のキャラウェイの隣人ジェイ・ギャツビーは毎日盛大なパーティーを開き、たくさんの人を招待している謎の人物。主人公もあるときそのパーティーに招待され、ギャツビーと親しくなる。親しくなるキャラウェイとギャツビー、そして毎日開催するパーティーの目的がキャラウェイに明かされる

感想

 ちょっと僕が読むには素晴らしすぎる作品だったというのが読了後最初にでた感想だったと思う。
 大きくわけるとストーリーと文章の技術が素晴らしいと思ったのだけど、ストーリーの方はなぜ素晴らしいのか説明できない。特に共感できる登場人物がいるわけでなければ、ハッピーエンドというわけでもないのに清清しい感じで終わっていた。文章の方は少し読めば技術の高さについてはすぐにわかる。情景の描写がとても緻密で、言葉も選んである。流れるような文章が続くうえに、情景と登場人物の感情が入り混ざるような表現がなんどもあり、おいしいウイスキーを飲んでいるような甘くて重厚な香りがしてくる。後書きにもあったが、なぜこんなにも美しく芳醇な文章を28歳の作者が綴れたのかと思う。
 それでもやっぱり上手にこの小説のよさを言葉にできない。それは単に僕がハルキニストだからこの手の文章に酔うのが好きなだけだからかもしれないし、僕の文学的能力がまだまだ低いからかもしれない。なんとかこの気持ちをこの場で文章にしたいのだけど今は面倒なので考えすぎるのはやめようと思う。来年また読んだとき、また新しい感想がかけるんじゃないかと未来の自分に期待している。

まとめ

・ライトノベルの対極にある存在。リッチノベルとかそんな感じ
・村上ファンには客観的に評価できない
・毎年一度は読み返したい

★★★★☆

森 博嗣の生き方 読書感想「自由をつくる 自在に生きる」

12月 25th, 2009 admin

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)
森 博嗣
集英社
売り上げランキング: 445

「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」などで有名なも森 博嗣さんの新書。
友人がmixi日記で「俺(日記の彼)の生き方のことがかいてあるから読んでみろ」とお薦めされていたので即アマゾンした。

概要

自由とはなにか?それは支配から開放された不自由でない状態だろう。という作者の自由に対する考え方と、それに基づいた彼の生き方がまとめられた作品。

目次

1章 人生の目的は自由の獲得である(人生の目的は自由躰による支配 ほか)
2章 他者からの支配、社会からの支配(服装と自由ブログの罠 ほか)
3章 身近に忍び寄る支配(考えること人生における支配とパワー ほか)
4章 支配に対するレジスタンス(自由を得るために職場に問題があるとき ほか)
5章 やっかいなのは自分による支配(老いと好奇心老人には余裕がある ほか)

感想

 まず、この本の帯に「思いどおりの人生の作り方とは?」とあるが、あまり思いどおりの人生の作り方については書いていない。最初から最後までほとんどが森 博嗣の考える自由について語られているだけである。(肝心の自由のつくりかたは残り11ページというところからやっと始まる。)
 なぜ自由についてそこまで語られているかというと著者が人生の目的を「自由」においているからだそうだ。あまりにも「これが自由だ」「これは支配され、不自由だ」と最後まで徹底的に繰り返すので、僕は「森 博嗣は自由に拘りすぎていて、不自由だ」と思ったほどだ。しかし自由に拘るのも自由だし、自由に拘らないのも自由だと森 博嗣は考えているだろう。また、自由であれさえすればいいとも言ってはいない。

 僕も森 博嗣のように自由では無いとはいえ、自由に対して拘りがある方なので共感する部分が多く面白かった。本書に書いてあることの9割には激しく同意するし、反論があるひとがいれば徹底的に否定したくなるほどだ。(1割の同意できない箇所は森 博嗣が結婚式や葬式にはあまり意味がないといっているところ。僕はこういう儀式は一見無駄なようで、とても意味があるものだと思っている)

 本書を読み追えて、本の題名にある自由のつくりかたについてほとんど言及されていない点が大きな不満として残ってしまった。どうも「こう生きろ!」と間違があるとわかっていても断言できないところは理系の悪いところのように思う。しかし前書きにもあるようにこれはヒット小説を何本も書き、論文も1000本以上書いてきたという森 博嗣が「自由についてなるべく丁寧に平易に綴った本」なのだ。自分の信条のようなものをこうもわかりやすく表現するというのはさすがであったと思う。

まとめ

・こんな人が先輩や上司だったらかっこいい
・父親だったらうっとうしい

★★★☆☆

火傷しなけりゃわからない 読書感想「華氏451度」

11月 11th, 2009 admin

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)
レイ ブラッドベリ
早川書房
売り上げランキング: 22686
おすすめ度の平均: 5.0

5 SFが描く普遍的問題

前回紹介した「虎よ!虎よ!」と一緒に借りた本。まずこの本はタイトルだけでその価値が保証されているように思える。SF小説のタイトルランキングを作ったらベスト5には入るのでは無いだろうか。

華氏451度とは紙の燃焼点、つまり紙に火がつく温度である。
(僕がこの本を読んでいたら知り合いが「ああ映画みたことあるよ、流行ったよね」と言っていたが多分それは451度の2倍ぐらいの温度の話だろと思った)

あらすじ

時代は近未来、(なんと!)本が禁止されている時代。情報が規制され、人々は耳にラジオをつけ、立体のテレビに浸り、考えることをしない生活をしている。
主人公はファイヤーマン。ただし火を消すのではなく、本を違法所有している家を焼くというとんでもない仕事。いまの社会がなにかおかしいと感じていた主人公は、本を命をかけてまで守る人を目の当りにし、ある時ついに誘惑に負け、焼かなければならない本を持ち帰ってしまう。

感想

地味!話はとても地味である。そして暗い。しかも主人公は最終的にわかりやすい成果は得ない。政府を倒すこともなければ、周囲の人を助けることはできないどころか、嫁に密告される。
しかし、だからこそ僕は良い結末だなと思った。世の中を変えるということはきっとこういう風にしかできないのだろうと。人間は僕を筆頭に愚かな人がほとんどなわけで、そんな人達に本が読めない現状のおかしさを訴えたり、テレビの害を訴えたりしてもどうしようもないのだ。

僕は最近レストランにいくにも、観光をするにもネットの口コミ情報が気になり、なにか物を買うなら価格.comが気になり、新しい言葉を聞いたらwikipediaで調べてしまう自分の習慣にうんざりしている。ネット(に依存してしまった自分)のせいで自分で考えることも、人とのコミュニケーションもとても減ってしまっているのだ。

以前だったらセーターの洗いかたがわからなければ母親に電話した、釣り具の扱いがわからなければ上司に聞き、安い店がわからなければ近所の人に聞いた。そういったあたりまえだったコミュニケーションがネットのおかげでどれほど不要になってしまったことか。

しかも最近はTwitterなんでものが登場してしまい、ついに友人同士、ひいては自分自身とのコミュニケーションも奪われようとしている。友人に話を聞いてもらい否定されたり、自分自身に問いかけて無理矢理咀嚼するということが不要になってきているのだ。感じたことは嬉しいことも悲しいこともTwitterに投げればいい。フォローが100人もいればどんな内容でも「それはひどい」「それは
すごい」と何人かは肯定してしまうのだから。つねに肯定されて生きていく。悩みのない世界。そんな風に成長した人間とはどういうものなのだろうか。
しらないうちに僕等は現実を見つめるのが恐ろしいからと、詩を嫌がるボウルズ夫人を笑えない状況になるんじゃないかと思う。

しかし、それが悪いことばかりとは思わない。こういうことは新しいものが発明されるたびに誰かが言うものなのだ。レコードができたときも「コンサートにいかないで音楽を聞くなんて!」と言った人がいるだろうし、電話ができたときも「顔をあわせないで会話をするなんて!」と嘆いた人がいるだろう。僕が知りたいのは、その先がどんな風になるかということだ。それは世界が絶望に包まれた状況で不死鳥を例にあげて登場人物も言っている

どうだね?わしたちに似ておるとは思わんかね?わしたちもそれとおなじことを、何度となくくりかえしておる。ただ、わしたちには、不死鳥のもっておらなんだものがある。わしたちには、いまやったことの愚劣さがわかるのだ。

この話は作者の人類に対する絶望と希望の両方が詰められた話である。作者が考える未来はもう来ているのか、それともずっと先の話なのか、それとも単なる杞憂なのか、とてもかんがえさせられ、考えれば考える程面白い一冊でした。
★★★★☆

ジョウント!加速! 読書感想「虎よ!虎よ!」

11月 11th, 2009 admin

人のお薦めを読むシリーズ。今回は複数の作品を貸してもらったうちの一冊。
この虎よ!虎よ!は”超”がつくほど有名な作品なのですが、僕は新装版を借りたので後半まで最近のお話だと思っていました。とにかく現代の作品に影響を残しすぎな恐ろしい作品でした。

あらすじ

時代は人類が人にもともと備わっていたテレポーテーションの能力(ジョウントという)を発見した25世紀。惑星と衛星での戦争が起こるなか、宇宙船「ノーマッド」は物資の輸送中に攻撃を受け漂流してしまう。ノーマッドの乗組員であるガリヴァー・フォイルは絶望的な状況の中、強靭な精神力で救出を待つ。そして奇跡的に近くを宇宙船「ヴォーガ」が来て救助信号に気がつくも、なぜかヴォーガは救助をせず去っていってしまう。
主人公はあきらめて死にたくなる程落胆するが、自分を見捨てたヴォーガに復讐を誓い、その怒りのエネルギーで精神を正常に保ち、なんとか壊れた宇宙船で生還し復讐を開始する。

感想

とにかくいろいろなSF要素が詰まっている。詰め込みすぎだろってぐらい。ジョウントはもちろん、宇宙戦争、新物質に謎の文明、特殊なタトゥーに加速装置。これらのおかげでとても話が賑やかになっている。

そして僕は拒否反応が起きたのだが、主人公がかなり野蛮かつパワフル。
全然いいやつじゃないし、物語自体が
「くそー、俺を助けなかったあいつ絶対ぶっころす」
という動機で進行するのもどうかと思うのだが、そもそも最初は「あいつ」が宇宙船自体に設定されており、まず主人公が宇宙船ヴォーガをぶっ壊しにいくあたりがぶっ飛んでるなと思いました。
最後まで全然いいやつじゃないし

最近はこれ女性が読んだ方が面白んだろうなーというような話を読むことが多かったのですが、これはまさに男性向け、男の子向けの小説でした。
マッチョな主人公が好きな方におススメ

★★★☆☆

本自体が好きか? 読書感想「本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本」

10月 20th, 2009 admin

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本
内沼 晋太郎
朝日新聞出版
売り上げランキング: 50677

わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる(以下スゴ本)経由で買った本。僕とスゴ本の相性は非常に悪く、積読の8割はこのスゴ本の紹介で買った本だ。しかし相性が悪いとわかっていても紹介が上手だからつい買ってしまう。スゴ本はすごいブログだ。

概要

ブックプロデューサーという仕事をしている内沼晋太郎さんという人の話。ブックプロデューサーがどんな仕事かと一言で説明するのは難しい。この本を読めばなんとなくわかるのだけど、僕は本の新しい価値に光を当てていくような仕事だなと思いました。
この本はめずらしく、右からも左からも読める構成でつくられている。右から読めば「本の未来を作る仕事」について、左から読めば「仕事の未来をつくる本」の内容だ。

感想

とても面白い、特に「本の未来をつくる仕事」のほうが面白かった。それは僕も本自体を好きな人間の端くれで、人に本を贈ったり、人に勧められた本を好きだからというのもあるかもしれない。でも、そうでないひとも、もし本を読むこと以外に使うという方法が思いつかないなら是非読んでみて欲しい。

たとえば文庫本を紙で包んでしまい、本のなかの印象的な一文だけを包装紙に印刷して販売するというやりかた。本のタイトルもわからなければ著者もわからない。だからこそ先入観なく自分の気に入った表現の文章から本を選び、新しい作家やジャンルに出会うことができる。さらに、引用が印刷されている面の反対には郵便番号を書く欄がある。そう、これは買ったら切手を貼って誰かに贈ることができるのだ。

こんな愉快な本との出会いをいくつも内山さんはプロデュースしている。本を読んでいて僕には彼が手に取った本が微笑んでいるような絵が思い浮かんだ。単に本を買って読むだけではなく、本との出会いを大切にしたり、本を介したコミュニケーションなんかを作ったりする。本が喜ばないわけがない。

そして、個人的に面白いなと思ったのは彼の本への愛はすごいのだけど、本を壊すことも平気でやってしまうことだ。本を刻んだり、表紙だけを使って遊んだりと、「えっ」と思うようなこともやっている。なんだか酷いことをしているように感じるのだけど、それは彼なりの理屈があってやっていることなのだ。

これを読んでいると、自分もなにか行動を起こしたくなってうずうずする。うずうずしたら今度は「仕事の未来をつくる本」を読んでみるといい、なんだか自分にもできそうな気がしてくるから

★★★★☆